55歳で退職したおじさんのブログ

投資・副業・役職経験のない平凡なサラリーマンでした。贅沢しなければ辞めても暮らせる程度に貯まったので早期退職。「健康で文化的なビンボー生活」を楽しみつつ、旅行、沖縄、小説、アーリーリタイア、健康、メンタルヘルス、シニア、ライフスタイル、不動産購入、ブログ、日々の暮らしなど記していきます。

先生を志す高校生との対話(学習支援の記録)

 

 学校の先生が足りない…と言われて久しいです。

 公教育を例として正確に言えば、「正教員」は足りています。

 ただ、採用試験の倍率は下がっています。また、試験日が異なる複数の自治体を受験できるので、3つの自治体から合格をもらって2つは棄権というケースもあります。教育実習期間と民間企業の採用試験とが重複して、教育実習を棄権するという大学生も数は少ないですが存在するのは事実です。

 足りないのは、「非常勤」なんですね。「任期限定の講師」、たとえば産休・病休を取る先生の代わりに入る先生です。昔は「産休補助」と言われていました。

 産休補助を担当する先生は、各教育委員会に登録されている講師から選ばれます。

 「採用試験を落ちて教職浪人することになった人」「結婚・出産などを機に教員を退職したけど、子供も手がかからなくなってきた人」の多くが、講師名簿への登録を申し出ます。が、最近は、講師登録する人が減ったのです。

 教職浪人してまで先生を目指す人が減りました。教職と民間とを同時に受け、民間に受ければそっちに行きますよね。結婚・出産で教職を辞める人も減りました。そういう昔風な習慣はなくなりつつあります。一方、結婚・出産で教員を辞めた人の多くは、もう現場には戻りたくない…と言います。わかります。

 では、足りない分はどのように補っているかというと、大きく二つです。一つは「退職教員」。校長で退職した先生に声をかけて「お願いします」というパターン。

 もう一つは、定年退職した先生の「雇用延長」。

 定年退職して退職金ももらい、送別会もするのですが、4月から同じ現場で同じように働くというパターン。以前は、「雇用延長をお願いしてもなかなか採用されない」という状況でしたが、今は「雇用延長して働いてくれませんか」とお願いされる状況だそうです。

 

 さてさて、こんなことを書いたのは、教員志望の高校生と少しお話する機会をいただいたから。先生になりたいのだが、あまりにも先生という職業が馬鹿にされる、教育という営みを否定されるので、不安になったそうです。

 で、少し日本の教育を斜めから見た評価をお伝えしました。

 一つの教室に、同じ年齢の子供を40人座らせ、教科書と黒板で授業を進め、識字率と九九までの計算力をほぼ100%にした日本の教育システムってのは、実はとんでもなく優れていると考えることもできます。公立高校から海外大学に進学する生徒さんも増えてきましたし、高卒で地域産業を支える人材も育成しています。ただ、優秀な人にお仕事が集中するように、優秀なシステムにもお仕事が集中します。

 暴力行為の取り締まり(警察)、盗難の犯人捜し(警察)、いじめの処分(裁判所)、給食指導(福祉)、給食費の回収・取り立て(税務署)、虐待を受けていないかの観察(福祉医療)、発熱・けがをした場合の処置(病院)、夫婦喧嘩・ご近所トラブルの仲裁(弁護士)、受験対策(教育企業)、貧困対策・不登校対策(NPO)、子育て(地域社会)、お悩み相談(心理学)などなど、教育システムの中に日常のトラブルや社会課題の解決まで持ち込まれるようになったのです。「社会や地域が学校に押し付けた」と言ってもよいでしょう。

 それでも、日本の学校の先生はとても優秀で、こうした社会課題を解決に導きつつ、PISAの学力調査で世界のトップクラスの学力を維持するという快挙を成し遂げています(にもかかわらず教育批判がやまないのはなぜでしょう…)。

 現代日本の優秀な教育システムは、教育に依存する人々によって崩壊しつつあると言える現状は認めないといけないでしょう。しかし、それを「日本の学校の先生の高い能力と献身」が支えていると言えます(これは、公務員の現状も同じ。優秀な公務員が「書類の偽造」を命じられ命を絶つのが現実です)。

 そういう視点で、もう一度自分が受けてきた教育、今所属している高校の生徒さんたちや先生方の日常、地域の人々の言葉を見直してみては…と伝えてみました。

 

 あなたが目指す職業(先生・教育)は、人類の幸福、希望ある未来を実現するためにはとても大切な職業です。高度な知識・教養・スキル・倫理観を身に付けることが必要で、しかしその対価としての給与はもらえませんし、教員としての高度な知識やスキルが発揮できないことの方が多いとも言えます(先生に関係のない社会問題や、責任のない人間関係のトラブルに巻き込まれてしまうので…)。

 そんな社会の現状が、「教職を目指すことへの不安」ならば、この社会の現状をもう少し深く掘り下げてみてはいかがでしょう。なぜこんな社会になったのか…を解き明かしてみてください。

 

 日本って、先人たちがとてもよい社会システムを構築したのに、それを崩壊させるような人がいて(ポピュリズムですね)、ネット上には不安と批判とがあふれるようになってきましたね。

 でも、少しずつ社会システムの再構築が進み始めています。

 それを、若い世代に託すことがせめてもの…と思う今日この頃です。