飛び込み案件があって、これを昨日提出しました。
あと、高校生の学習支援があって、防災関係のことを聞かれました。担当の先生が、私が東日本大震災の経験者ということをしゃべりましたね。
個人的には、阪神淡路以降の災害で学んだ教訓が活かされている部分と、同じ問題が繰り返されている部分とがあるという印象です。動ける人には被災地以外の場所に避難してもらうことが積極的に行われていること、女性・障害を抱えている人への支援が意識されていること、現地での犯罪・防犯が公的に発言されていることなどは、変化を感じています(肯定的です)。
高校生が気にしているのは、被災地域以外への避難が進められていることです。
「動ける人に被災地以外の場所に避難してもらうこと」は、「現地の避難所は一杯なことが多いこと」「そのことで支援が届かない自宅避難者・自主避難所で暮らす人が生じていること」という要因が大きいです。
しかし、そのことと、被災地の人口減少・過疎化と結びつけ、「能登の人に強制移住させようとしている」「インフラなどの復旧はたいへんだろうから、そのまま誰も住まない地域にしてもよいのではないか」などの主張する人がいるようです(ネットの上の話ですけどね)。ついでに言うと、これが政権批判・政治批判と結びついて、「自民党はそういうことを言っている」「行政の横暴だ」と怒っている人もいます。
高校生にもそのような理解をしている人がいました。
ええと、私の知る範囲では誤解ですね。
復興モードに入った時、どうするかは「住民の意思」になります。
もちろん、町の規模によって「予算額」は異なりますし、いつまでに決めてくださいという期限もあります。でも、基本的には「住民が決める」が原則です。
これは、民主主義・人権など道徳的な原則に従うということもありますが、「災害・紛争などで町が失われた場合の緊急避難措置・有効な復興方針」についての学問的研究もありまして、そういう根拠・裏付けに基づいた判断でもあります。
東日本大震災の時は、「復興方針を決める住民の会議に、外部からファシリテーションの専門家を招いて、すべての住民の意見を反映させるようにした」「町づくりの専門家を招いてアドバイスを受けた」という自治体がありました。こういう自治体は、住民の納得度も高く、復興スピードも速かったです。
住民の意見は、「これを機に、人口減少という現実を受け入れ、未来を根拠とした町づくりをしよう」「元通りにしてほしい」の二つに分かれ、ここが論点となることが多いです。現実的には「元通りにしてほしい」が高齢者を中心に多数派となることが多かったのですが、元通り派が多数決を占めた自治体は、総じて復興スピードが遅く、住民が地域に戻るまで時間がかかりました。
一方、若い人が中心となって新たな町づくりを進めた自治体は復興スピードが速かったです。そういう町は、人が減っても活気があります。人々が前向きで、故郷を愛し、未来を創って行こうという気概を感じます。
ということを伝えて安心してもらいました。
そして、「決めるのは国民・住民・自分」であることをもう一度確認して欲しいと伝えました。これを怠ると、「決定権を持つ少数が利益誘導」をするようになります。
それは、今ネット上にある、「事故の解決・被災者の支援につながらない個人の感情論が世論になる」ことと同じくらい危険なことです。
大きな事件・事故・災害があると、隠れていた社会課題が可視化されます。やや不謹慎な言い方ですが、そういう時は、社会課題の解決、未来を根拠とした価値観への転換の機会でもあります。
私みたいな大人の意見を聞くのではなく、現地に行って自分の目で見て、現地人の言葉を自分の耳で聞いて、高校生だけで話をして考えを深めてほしいと、そう思いました。知識の低い人が正義感を振り回すという愚かさに気づき、そこから「何のために学ぶか」にも気づいて欲しいと痛切に思う今日この頃です。