55歳で退職したおじさんのブログ

投資・副業・役職経験のない平凡なサラリーマンでした。贅沢しなければ辞めても暮らせる程度に貯まったので早期退職。「健康で文化的なビンボー生活」を楽しみつつ、旅行、沖縄、小説、アーリーリタイア、健康、メンタルヘルス、シニア、ライフスタイル、不動産購入、ブログ、日々の暮らしなど記していきます。

高校生との対話(学習支援の記録、「正解と最適解との違いとは」)

 

 昨日は、高校生との対話の時間。

 テーマは「正解と最適解との違い」。

 

 【例題】

 A市は、平成の市町村合併で周辺5つの町が集まってできた市(人口3万人)。

 最近10年で、人口は5,000人減少し、高齢化率は45%に達した。

 公民館・学校・旧町民住宅などの公共施設、水道や道路・橋などの公共インフラは老朽化が進んでおり、早急な対応が求められている。一方で、人口減少やハコモノの維持費による財政破綻という将来も予想されている。

 5つの町(旧行政区)には、幼稚園・保育所・小学校・中学校が1つずつある。

 児童減・生徒減が加速しており、5つある中学校は2つに統合することが検討されている。ただし、5つある保育所・幼稚園に関しては、旧行政区に1つずつという現状を維持する方針が確認されている。

 その中で、B町の幼稚園・保育所は大きな課題を抱えている。

 それは、「激甚災害指定区域内」に幼稚園・保育所があることである。

 最近5年、梅雨時期から夏の台風シーズンにかけて風水害に襲われることが増えた。今まで被害がなかった地域が冠水する、土砂崩れが起きるなどの事例が増え、住民の不安は高まっている。B町の幼稚園・保育所は老朽化が進んでいる施設の一つでもあり、これを安全な場所に移転すること、その際「認定こども園」として再編することが、安全・財政などをふまえた合理的なプランであると考えられる。

 

【課題と論点】

 問題は、B町の中に、移転先として適当な場所がないことである。

 市有地は危険エリアにしかない。私有地に安全な場所はあるが、町の中心部であり用地買収に多額な費用がかかる。

 市は、5㎞ほど離れた場所に所有する広大な市有地に移転する計画を立てた。元々観光施設があった場所のため、周辺道路は整備されている。日常的には保護者による送迎の利便性・安全性が高く、災害時は避難所として周辺住民を受け入れることも可能である。

 この場所は、現在の位置よりも5㎞ほど離れてはいるが、最も近い場所である。

 ただし、行政区上は隣のC町になる。

①市の考え方

 児童の安全を最優先する。

 最も早く着工・移転ができる市有地を活用したい。

 ただし、5㎞ほど遠くなるので、通園手段については今後検討したい。

 (いわゆるバス送迎の可能性。ただし、地元のバス会社に問い合わせると運転手確保の問題があり、即答はできないとのこと)

②住民の考え方

 なぜ隣町に移転するのか。旧行政区に1つずつという原則を守れ。

 5㎞離れた場所となれば、保護者に送迎の負担がかかり、共働き家庭には負担が大きい。

 

【ポイントは、住民の考え方】

 住民全員が納得・合意するのは、「同じB町内で、送迎の負担が現在よりかからず、安全な場所」となります。この実現は不可能ではありません。B町中心部の私有地を買い取って移転すればよいのです。ただし、それには多額な費用と、数年の時間が必要となります。多額な費用は市全体の財政を圧迫します。また、市の財政体力をこえた負担は、将来世代への負債として残ります。この負債を、将来世代が支払えればよいのですが、このような負債が重なった場合、財政破綻に進む可能性もあります、

 費用と時間が必要なことを市が説明すると、市民からは「それは市が何とかしろ、お前ら高い給料もらっているんだからどうにかしろ」となります。

 つまり、「同じ町内で、今より便利で安全な場所に移転せよ。お金は市が何とかしろ」です。

 この考え方は、市の「安全で、今よりも広く、より多くの住民にも利益があり(災害時の避難所設定など)、費用的にも安く(休眠市有地の活用)、2年以内に建設・移転が可能」という判断と対立します。5㎞遠くなるという課題については「いわゆる幼稚園バス」で解決するという構想はありますが、昨今の人手不足もあって「約束できない」「計画としては公表できない」という状況です。

 

【高校生の意見】

①市が提案しているのは「最適解」、住民が求めているのは「正解」

 住民は正解を求めている。つまり「すべての条件を満たすことを求めている。何か一つでも条件を満たさない部分があると反対する」。

 市は最適解を提示している。つまり「児童の安全を最優先とし、その他の条件に関しては70%程度を満たすプランを立てている」。

 「最適解」という概念を理解できない人は、「正解」しか考えられないので、市と住民との間に合意が成立することは難しいのではないか。

②当事者の意見は反映されているのか

 正解を求めて反対するのは、誰かということ。

 幼稚園・保育園の職員・保護者はどう考えているのかが、賛否に反映されているか確認したい。もちろん、日常の送迎に負担が生じることは理解できる。ただし、B町に「みんなで子供を育てよう」という意識があれば、保護者の送迎負担について、職場や住民が理解・配慮すればよいのではないか。

 反対意見の背景には、「隣町に移転する」ことへの不快感があるような気がする。旧行政区時代のプライドみたいなもので子供たちが危険にさらされるならば、住民全体の意識に問題がある。

 

【まとめ】

 行政に解決を委ね、住民が感情論・自分の利益を主張する状況と言える。

 その背景にあるのは、「正解しか認めない」「旧来の発想へのこだわり」と考えられる。

 これを「大学入試の小論文・総合選抜型入試」にあてはめると、受験生に求められているのは「総合的な状況から優先度を設定し、合理的な解決を提示すること」と言える。その際、根拠とすべきは「当事者の意見」「財政的根拠」「移転した場合に生じる課題を予測しその解決について検証すること」と言える。

 また、移転した場合に生じる課題(正解を求める住民の反対理由)は、「バスの運転手不足」「職場の勤務時間」など、大きな社会問題につながることが多い。この部分に関しては「市・行政」だけで解決できる問題ではない。したがって、市民・住民が「自分ごと」として捉え、理解・協力することが必要ではないか。

 

 というわけでした。備忘録として書き残しておきます。