担当しているプロジェクトは順調なのですが、いざ実践となると直属の上司からストップがかかります。ただ、大学や企業との共同プロジェクトについてはストップがかかりにくいです。というわけで、同じテーマであっても、「官民共同チーム」の方が進行が圧倒的に早く、「全員公務員チーム」はストップかかりまくりで先に進みません。
ただ、いつの間にか「官民チームが実践する」~「実践内容のフィードバックを公務員チームが検討・検証する」という循環が生じるようになりました。
「学が研究、産官が実践」ではなく、「官が研究、産学が実践」という不思議な構造になりました。上司が官にストップをかけてくれたおかげですね。
そして私は、上司からストップがかかった「幻のプロジェクト」を、他部署に提供することを考え始めます。縦割組織では「いけないこと」「前例にないこと」です。しかし、プロジェクトの内容や成果については、大学の研究発表、企業の実践報告ですでに公表されている部分もありました。
よりよい未来を創ろうとする人々に、プロジェクトで得た知見を提供できるならば、そこに官民や部署の違いは関係ない、何か言われたら辞めればいいやです。
振り返ると、当時の私に冷静さは少し欠けていたと思います。やけくそをこえて「無敵の人」となりつつありました。
もう一つ、その頃いろいろな方々から、「お話を聞きたい。意見が欲しい」というお話が舞い込みました。いわゆる「お座敷がかかる」のです。
その多くは、「沖縄問題」「東日本大震災の復興」に関することでした。
私は「東日本大震災の被災者」であり、「4年間の沖縄勤務経験」があります。そのためか、それぞれの事情に詳しいと思われていたようです。個人的には、「現地と東京の温度差」というものを肌で感じていました。そのことが課題解決を妨げているという実感もありました。現地では生じていないことが、東京では事実として語られていることも多いです。そういう間違った情報を修正することも大切と考え、できるだけ受けるようにしていました。
というわけで、ある時は朝ごはんを食べつつ、ある時は料亭に呼ばれてです。会場が東京近郊の高級旅館の離れだったことがあります。小説「ハゲタカ」の世界そのもの(笑)。
そこで学んだのは、「沖縄や震災復興に真剣に取り組んでいる人」と、「そこにある利権を得たい人」の見分け方。
もちろん、私は「利権を得たい人」からは距離を置きます。
しかし、直属の上司は利権を得たい人に協力しない私に怒り、協力せよと言います。
ここでも、上司と私の考えはすれ違います。そして、私の中の「無敵な人」が、私の人格を乗っ取ろうとします。
つづく…