ハラスメントという概念が入ってきた頃、なかなか戸惑いがありました。
業務の中で経験することの多くが該当するからです。窓口や電話での「クレーム」もそう。議会担当者も難しい顔をしています。そもそも公務員組織というのは、「上意下達的システム」ですから、人間関係が破綻している・信頼関係が弱いという状況があれば、即ハラスメントなんですね。
そこからわかってきたのは、「ベテラン・役職者のハラスメントは見えやすい」ということ。年寄りから若い人への言動にハラスメント的要素があれば、それはすぐにわかります。
問題は、「同世代・若手のハラスメント」。某球団であったのはこのパターンですね。これは、「見えにくい・気づきにくい」のです。この手のハラスメントは、上司のいる場ではやらない、閉鎖空間で行われる、犯罪との境界線ギリギリのラインの行為である、被害者にも非があるような構造になっている…などの傾向があります。
個人的に考えていたのは、ベテランがハラスメントで失脚するのは仕方がないだろうということ。抑止が必要なのは、才能ある若手を無自覚なハラスメントで失うこと。これは被害者としても、加害者としても。
近年、高齢者の交通事故がニュースとなり社会問題になっていますが、交通事故の件数を年齢別に整理すれば、若者の事故件数も多いです。同様に、ハラスメントも「ベテラン・役職者」が犯せば事件になりやすいですが、件数で言えば若手のハラスメントも少なくはありません。さてこれをいかんせん…。
コミュニケーション能力には個人差があります。私は低い方です。
で、低い人には、「同世代より、年上・年下との関係構築の方が得意」「自分の考えを人に伝える時、比較・否定・優劣の表現を使いがち」などの傾向があります。後者の場合、「Aはおいしい」と素直に言えばよいのに、「Bよりおいしい」「今まで一番おいしい」などの言い回しをするので、「Bはまずいってこと」などの印象を相手に与えるんですね。もちろん、本人にそういう意図はありません。しかし、こうして本人と相手との人間関係・信頼関係が崩壊していくのですね…。
で、ハラスメント抑止のために考えたのは、「良い意味で気になる部下・若手を役職者にアンケートで問う」という手法。よく相談に来る、プライベートでも付き合いがある、自分も相談することがある、将来有望と考えている、仕事を任せることがある…などですね。ここで名前が挙がる若手は、やはり能力が高い人が多いのです。ただ、危険度も高い…という仮説。
それとなく調査してみると、仮説は証明されたと言えるでしょう。
これが、ハラスメントとして事件になれば、実行犯である部下だけでなく、上司も監督責任を負うことになります。どんなに能力があっても、事件になれば最悪退職です。この状況を俯瞰的に見れば、能力のある人材を喪失するということでもあります。もちろん、被害を受けた方も退職・休職・異動になる可能性高いですから、これも人材喪失になります。これらをコストとして計算すると、ものすごい金額…。
というわけで、自分のチーム内で実践していたのは、若手に、私自身の行動をチェックしてもらうこと。「頭」ではハラスメントとわかっていても、「価値観」は昔のままですから無意識にやってしまうことがある、特に私自身が精神的余裕を失っている時はそういう言動・判断を無意識にやってしまう可能性が高まる…ということをご理解いただき、「それはだめですよ」と伝えてもらうようにしていました。要するに「ハラスメントの可視化」です。上司のハラスメントは見えやすいですから教材としては最適。ここでハラスメントを学び、可視化することで抑止するという逆説ですね。
(これは、夫婦間でも実践しています)
で、こういう意識も「チーム作りのワーク」として取り入れていました。
ハラスメントは、個人の価値観によって認識が大きく異なります。だからこそ、「ハラスメントとは何か」を常に学ぶ意識を持ち、学びを共有しようということ。
若い人が、ハラスメントで未来を失ってほしくはないです。
若い人がハラスメント加害者にならないようにと思います。
可視化されないだけで、意外と多いんです…。