
◆高校生の文章を添削していると…
お手伝いの機会をいただいている学習支援では、小論文や志望理由書の添削をしています。悩むのは、良いところを伸ばすか、今一つのところを修正するか。
よく言うのは、完成度が低いレポートは、良いところを探し出してほめる。
完成度が高いレポートは、小さな傷が致命傷にならないようにダメ出しをしておく。
つまり、評価が高いとコメントは厳しく、評価が低いとコメントがやさしくなる。これを意図的にするってことですね。
◆もう一つの視点
同一規格の製品をたくさん作る場合は、傷や変形があると致命傷ですから、ミスがないことが重要です。つまり「短所の修正」が完成度を高めます。
一方、クリエイティブな場では「既存の価値観にとらわれない発想」「多様性」が重視されます。つまり「長所を伸ばすこと」が創造性を高めます。
小論文や志望理由書は「形式」と「内容」とからなります。
たとえば、「テーマの理解」「序論・本論・結論」などの形式は守ってもらう。「実体験に基づいた考察」「考察の独自性」などの内容は自由に掘り下げていく。ですから、評価は「形式は整っているか」「内容の深さはどうか」が観点。添削は「形式が間違っている場合は厳しく指摘する」「内容は良いところを見つけて伸ばす」が方針になります。
◆原巨人が勝てません…
ショート坂本の後継者が話題ですが、「坂本と同じ規格のコピー」を求めているような印象を受けます。ですから、候補者はたくさんいますが、「坂本ほど守れない」「坂本ほど打てない」と言われ2軍に行きます。つまり「短所の修正」ばかりが求められるのですね。やがて候補者たちは、自分の長所を伸ばすことを忘れ、プロ入りの際に評価された能力を磨くことなく、個性を失い、戦力外通知を受ける…。
これは、俗にいう「工業社会的価値観」ですね。工業社会の管理者は原監督。つまり、原監督のイメージを満たさないと使ってもらえない。坂本のように打ち、坂本のように守れること、つまり坂本の「コピー」を求めるのが原監督の価値観。その結果、選手は「自分の短所の修正をしないと試合に出れない、1軍に上がれない」と無意識に思い込み自滅していきます。そりゃ選手が育ちません、勝てません。
◆意外と選手ファーストなのが野村監督、広岡監督
弱小球団を強くした名将に、野村監督・広岡監督がいます。
お二方とも毀誉褒貶が激しく、広岡さんはその毒舌ぶりもあって「老害」とも言われていますが、実は「個々の選手が持っている能力を伸ばし、適材適所にあてはめてチームを強化した」という共通点を持っています。野村監督はミーティングが長く、広岡監督は練習時間が長いのですが(笑)、それは「勝つための形式」を守ることへの厳しさ。個々の選手の育成には、定型的な型にはめない創造的なアプローチを感じます。
野村・広岡監督は、選手の能力にあわせたチーム作りをします。
原巨人は、監督の理想にあわせたチーム作りが進められています。ですから、選手が揃うと強いですが、選手が揃わないと勝てません。勝つためには、育成より揃えること(FAやトレード)が効果的になります。
◆人口減少社会の日本の進む道は??
やる気がないなら辞めろ、力なきものは去れではなく、やる気に火をつける、力が付く方法を伝えることが重要でしょう。
というわけで、個人を育てるには褒めること、長所を探して見つけ、それをどのようにすれば伸ばせるかをさりげなく伝え、伴走することですね。ただしこの方法は、時間制限のない世界。成果・結果がいつ出るかも個々によって違います。
というわけで、長所を伸ばすことを優先しています。
ただし、結果が出るのは、短所が修正できた時、短所が長所になった時。
つまり、「短所を長所に変える思考力を持つ人」が成功者に近いことは付記しておきます。