テーマ「利益衡量」
トロッコ問題をご存じですか?
線路の保守作業中、何かの手違いで電車がやってきた。
このままだと5名の保守作業員は亡くなってしまう。
救うためには、あなたの目の前にあるポイントレバーを操作して、待機線に電車を誘導すればよい。
ただし、待機線にも3名の保守作業員がいる。レバーを操作すれば3名が亡くなる。
さて、あなたはどうしますか??
という問題です(人数や設定などはバリエーションがありますが)
◆目次
同じパターンの問題
①大きな災害があって、住民は近所の体育館に避難しています。
避難者は200名。そこに150人分の食料が届きました。
さて、どうすればよいでしょう。
②事故があって3名が大きな怪我をし、輸血が必要です。
しかし、輸血用の血液が2名分しかありません。
さて、どうすればよいでしょう。
③感染症のパンデミックが発生し、世界中でたくさんの方が亡くなっています。
夏にはオリンピックが開催予定で、世界中の人々が集まってきます。
さて、どうすればよいでしょう。
④美しい海のある過疎の村に、大規模なリゾート開発計画がもたらされました。
大規模リゾートは、過疎の村に雇用・税収・観光をもたらします。
しかし、美しい海の一部は埋め立てられ、また今まで村民が自由に使っていた海岸線の一部は観光客専用になります。
さて、どうすればよいでしょう。
これらは「利益衡量」の問題
「対立する利益を比較して、最も大きな利益をもたらすという判断を下す」のが「利益衡量」です。
これは「論理思考」であると同時に「最高善の実現」という倫理規範の実践でもあります。
で、公務員のお仕事の多くは「利益衡量」です。
あちらが立てばこちらが立たず。どう動いても批判とクレームは必須。
俗に言う「正解がない」というジャンルで、そこでは「最善解」「納得解」が求められる…というのが現在の一般論です。
「利益衡量」の正解?!
「正解がない」が一般論ですが、実は正解があります。
「最も大きな利益をもたらす」=「最高善の実現」が正解なんです。
150人分の食料を200名に分割し直して配布する。
2人分の血液で3人を救う方法を考える。
パンデミックの終息とオリンピック実施を両立する。
「美しい海の保存」と「雇用や観光」とを兼ね備えたリゾート計画として練り直す…
が正解なんですね(笑)
これをプランAとします。
で、「利益衡量問題」への対応は、プランAの実現の方法を全力で考えることから。
一番最悪なのは、正解がないと言って思考停止すること。
「200名に対して150人の食糧しかない。これでは平等・公平な配布はできないし、届かなかった50名が不満を持つから、一切食料を配らない。これが平等・公平だ」
「重傷者3名のうち、若い人から処置しよう」もダメ。これは医師の個人的価値観による判断。命と人権を「年齢」で決めている上、確実に1名が犠牲になってしまいます。
現場では
プランA(最高善の実現)を練り直していると思います。
ただし、プランAチームが提出する課題をベースに、プランB・C(最善解・納得解)が水面下で進んでいるはずです。
最終的には「プランA~Cの利益衡量」によって決定されるはず。
ちなみに、プランBCの難しさは「撤退プラン」を含むこと。
誰が「しんがり」をつとめるかなんです。
続く・・・