◆「下町ロケット」(池井戸潤原作)を見る
TVerの夏休み特集で、阿部寛演じる主人公(佃製作所2代目社長)のドラマを一気見しました(原稿書きながらですが)。
久しぶりの視聴は「純国産ロケットの打ち上げ」、さらには「自社製キーデバイスでの開発」を目指す藤間社長(杉良太郎)の命令に、右往左往する部下たちの群像劇という感想です。
◆主たる登場人物は…
佃社長 (佃製作所社長、エンジニア、ロケットエンジンバルブの開発者)
藤間社長(帝国重工社長、エンジニア出身)
財前部長(帝国重工社員、エンジニア出身、ロケット開発担当)
石坂部長(帝国重工社員、ロケット部品の調達担当)
悪役は「石坂部長」になります。
◆財前部長と石坂部長との対立の図式
石坂部長は、社長の「自社製キーデバイスでの開発」を実現しようとします。ですから、「佃製作所のロケットエンジンバブルの採用」には反対します。ロケット部品の調達担当部長ですから、部品の採用には大きな権限を持っており、開発担当の財前とは対立関係になります。これが彼の悲劇というか、ピエロ役の伏線になります。
財前部長は「佃製作所のロケットエンジンバルブの採用」を主張します。彼は、社長の「純国産ロケットの打ち上げ」を実現しようとします。そのため、開発担当としてより精度の高い部品の使用を求めます。これが、彼をヒーローにします。
◆エンジニアが考えること
藤間社長は、エンジニア出身です。
エンジニアの夢として「純国産ロケットの打ち上げ」があり、社長の立場から「自社製キーデバイスでの開発」を支持します。
石坂は、「自社製」というキーワードに共感します(社長の立場)。
財前は、「純国産」というキーワードに共感します(エンジニアの本能)。
この違いはどこからでしょう??
藤間・財前・佃は「エンジニア」です。選択の根拠は「データ・製品の品質」であり、人物評価は「夢と努力」です。
石坂は「政治力」で出世してきました。選択の根拠は「権威」であり、人物評価は「自分にとって利益があるか、ないか」です。
結果は、「エンジニア」の勝利となります。佃社長の作った「製品の品質の高さ、その開発の背景にある佃の夢と努力」に、藤間と財前とが共感したんですね。これは、よい意味で「エンジニア・理系的な正義」と言えます。
負けた石坂は、この「エンジニアの思考と正義」に気づかないんですね。そして、「品質の劣る製品を政治力で採用」しようとし、不正に手を染め、それを暴かれて失脚します。
◆日本のコロナ対策は??
公務員は早期退職してしまったので、内情はわかりません。私の勝手な想像になりますが、どうも「石坂部長」が出世して社長になってしまったような印象です(笑)。
つまり、「医学・医療のデータと事実とに基づいた解決と正義」よりも、「印象、感情に基づいた政治的な発想」が先走っているような気がします。たとえば「マスク面倒だから辞めにしろ。そういうしている国もあるだろ」という意見が強めなんですね。
皮肉なのは、「医学的な知見とデータ」に基づいた発想が「デマ」とみなされていることや、「医療側からも印象・感情に基づいた意見」が主張されてしまうことですね。権威に弱い人は妄信しますし、自分の主張を政治的な動きで実現したい人は権威を利用して正義をデマに貶めます(ま、よくあることですが)。
個人的には、人類が犯してきた過ちの多くは、悪しき政治的発想によるものという印象を持っています。戦争もその一つ。
そういう私はバリバリに文系人間なのですけどね。