55歳で退職したおじさんのブログ

投資・副業・役職経験のない平凡なサラリーマンでした。贅沢しなければ辞めても暮らせる程度に貯まったので早期退職。「健康で文化的なビンボー生活」を楽しみつつ、旅行、沖縄、小説、アーリーリタイア、健康、メンタルヘルス、シニア、ライフスタイル、不動産購入、ブログ、日々の暮らしなど記していきます。

日々雑感(過去の習慣が未来の価値観に裁かれることなど)

 

 私の文学・歴史好きは、遠藤周作氏の作品との出会いです。

 遠藤周作氏は私生活でスキャンダルめいたこととは無縁でした。

 しかし、太宰治石川啄木などの作家を知るようになると、彼らの私生活はまあ無茶苦茶。中学の国語で芥川龍之介の「トロッコ」という小説を読み、芥川ってどんな人なのかと思って調べてみるとこれも…。谷崎潤一郎三島由紀夫の作品世界の美しさに感動して他の小説を読むと「えっ」と思うようなものや、プライベートの言動にはちょっと理解が難しいことも。当時の大学受験で必須とされた「小林秀雄」も中原中也と何してんの…という。

 島崎藤村になると、自分のスキャンダルを作品にしてしまうという、ま、それが自然主義と言えばそれまでですが、で、そんな時代の作家のひとりである菊池寛が設立したのが「文芸春秋」という…。

 

 なんてことを思い出したのは、昨日ネットでフジテレビ元社長の遠藤龍之介氏の記者会見を偶然みたから。遠藤龍之介氏の父は遠藤周作氏。そのエッセイには子供の頃の龍之介氏のエピソードが記されています。

 大学生になっても「ぐうたら生活」を送っている息子に、父は「お前将来どうするんだ」と聞きます。答えは「何かを創る仕事をしたい」でした。作家の父は「へー、お前に(何が創れるんだ?)」という心情を綴っています。

 大学を卒業して、龍之介氏はフジテレビに入社します。まだ河田町の頃ですね。

 遠藤周作氏の教育方針は「うそをつかない」「ともだちを裏切らない」「弱い人間を馬鹿にしない」で、それ以外は干渉しないでした。フジテレビとしては「作家遠藤周作氏のご子息」ということも採用時に配慮したと思いますが、本人とその父は「裏で手を回す」ことはしていないと言えるでしょう。

 フジテレビに入った龍之介氏は、制作部でドラマなどのプロデュースをしますが、程なくして人事・広報などの担当になります。遠藤周作氏の父(龍之介氏の祖父)は、戦前の安田銀行などの重役を歴任した実業家でした。遠藤周作氏の兄(龍之介氏の叔父)は、東京帝国大学逓信省電電公社と進み、特に電電公社時代は労務担当重役として労組との交渉に手腕を発揮した方です。龍之介氏は、父の血である「創作」を志しましたが、その才能は「実業家・組織運営」の面で発揮されたと言えます。とくに長年勤めた広報部での手腕は高く評価されていました。

 

 昨日の記者会見の対応も、私の感想は非常に誠実で、企業の対応としてよくなかったことはそれを認めつつ、立場上言えないことには言葉と表情でニュアンスを伝えようとする場面がありました。事態を客観的に理解し、言葉を選びつつその是非をきちんと伝える姿勢は、さすが広報マンと感じました。

 気になったことは二つ。

 まず、記者の質問のレベル。報道には「権力の監視・市民の代弁」という機能があるのはわかりますが、質問内容は「○○のような声があるが受けとめは??」ばかり。

 自分の足で稼いで、自分の頭で考えた質問がない。ひどい。

 しかも「○○のような声」って、ネット上にあるノイジーマイノリティーの感情論に近いものが多い。そもそも自分の頭で考えた問いではないので「論点」がない。これでどんな記事を書くの?? というのが個人的感想。

 

 もう一つ、会見の話題は「未来の価値観によって裁かれている過去の習慣」であること。私が最初に就職した民間企業で「接待」は料亭か銀座でした。いわゆるプロのお店で、そのマナーをふまえて行われていました。

 一方、妻によると、妻が就職した(現在も勤めている)企業で「接待」は、居酒屋やレストランの個室で、女性社員がお酌要員として動員されていたそうです。合コンに近い時もあり、そこで知り合った者同士の結婚もあったとか。

 で、いずれにしても今の時代は、接待ということが利権誘導とみなされてダメ。とくに妻のようなパターンは絶対にダメ。ただ、妻は「飲み会も仕事のうち」という割り切りがあり、そこでの立ち回りで人間関係を構築したことは事実。でも「こういう習慣は自分たちの世代で終わりにする」「下の世代にはお酌はさせない」と考えて今に至ります(だから、役員になってもお酌し続けているという自虐的なオチがつきます)。

 

 記者会見で、遠藤龍之介氏が言葉を慎重に選んでいたのはこの点。つまり過去の習慣を裁こうとする質問への返答。もちろん、ダメなんですけどね。でも、それを掘り返すと他のマスコミも報道機関も企業もすべて断罪の対象です。島耕作も以下同文。

 そういう過去の習慣の非を認めつつ、でも発言は立場をふまえた客観的な言葉を選択しなければならない。難しいですね。

 

 過去の成功例・昔の習慣に依存すると、いつかこういう日が来ます。

 身を律する、健全な組織を作るとは「未来の価値観に裁かれないようにする」であることを再確認した記者会見。

 遠藤周作氏の作品に「王妃マリーアントワネット」があります。

 フランス革命があって、ルイ16世とその妻マリーアントワネットは断頭台に送られます。封建主義が市民革命に裁かれたんですね。

 あらためて、私も身を律しようと思います。まず、目の前にいる妻に裁かれないように。