
日本の義務教育は9年(小学校+中学)です。
で、日本の中学校卒業率は100%です。
私の世代には、小学校時代に長期入院をして1年遅れているとか、そういう事例がありました。しかし今は9年間、一日も登校しなくてもそれぞれの卒業証書を貰えます。
それが、日本の高校進学率(ほぼ100%)のベースになっていると言えるでしょう。
さて、ここで問題があります。
小中は義務教育なので、学校に行かなくても進級・卒業が可能です。
問題1
これは私立中学でも同じです(ただ、私立の場合は学校の方針によっては公立学校への転校を勧められるケースもあります)。
私立の中高一貫学校の場合、学校に行かない、授業を受けなくてもエスカレーター式に高校に進める場合もあります。ただし、高校は義務教育ではありません。大学と同じように「留年・卒業延期・在籍年数の制限」などのルールがあります。
しかし「一貫教育(エスカレーター)なのだから、学校に行かない、授業を受けない、単位を取れなくても自動的に進級して、系列の大学にも行けると思い込んでいる人」は少なくありません。そして「そんなことは知らない。一貫教育なのだから進級させろ、卒業させろ、大学にも行かせろ」とごねるケースは結構多いです。
問題2
特別な支援が必要な生徒さんが、特別支援学校以外で学ぶことを求めるケースです。
ある地域にいた時、医療的ケアが必要な生徒さんが、保護者の方の希望で学区内の中学に在籍していました。中学は市立ですから「市の予算」「市の教育委員会」での対応になります。医療器材の準備、専任看護師の雇用、保健室の先生の増員+看護師資格を持った養護教員の配置なども含め、年間で数百万円の予算がついていました。
また法的リスクもありました。もし学校内でその生徒さんが体調を崩した場合(それが不可抗力であっても)学校長・担任・看護師・養護教諭は処分対象になります。さらに言えば学校内で起きたことに関しては「行政責任」が重んじられます。民事訴訟を起こされた場合、学校が負け、市が賠償金を払うことになるでしょう。
で、この生徒さんが「県立高校(普通科)に進む希望」を持っていました。ねらっているのは定員割れしている高校。となると県のマターになります。
結論から言えば、定員割れしている高校を受験して不合格になり、その後県との話し合いを経て、翌年設備・人員が揃っている支援学校に進んでくれました。
決め手になったのは、不合格を出した高校の校長先生の言葉。
「合格させた以上、卒業させる責任があります。また、卒業後の進路についても支援をするのが高校の責任です。ですが、大変申し訳ないのですがその責任が果たせないと判断しました」
「高校の卒業要件は3つです。学費の納入、出席日数の規定を満たす、単位の修得です。問題は単位です」
「わかないことがあれば質問してくれれば教員が対応します。放課後や長期休業中の補習、赤点だった場合の追試験、体調が悪かった時の再試験も実施できます。体育はレポート提出で評価することもできます。ただし、追試験に合格できない、レポート提出ができない、成績や出席日数を補うための補習に参加できない、そして単位を認めることができないとなると、進級規定・卒業要件に沿った判断をせざるを得ません」
「卒業後の進路ですが、本校に来る求人には健康という条件が記されている求人票しか来ません。そういう意味で進路支援も難しいと判断していますし、経験やノウハウを持った教員もいません」
「合格させた以上、卒業させる責任がある」という言葉が、保護者の方に重く響いたそうです。また、高校も小中と同じように進級・卒業できるわけではないこともわかってくれました(高校のオール1は留年ですから)。
結局、卒業後の進路もふくめ、保護者の方が考えていたような「普通高校に進むメリット」はない…ということなんですね。
というわけで定員割れでもあっても…という結論に納得してくれたようです。
ちなみに、その校長先生は特別支援学校の勤務歴・校長経験がありました。そういうことも言葉の重みになっていたと感じました。
日本は終身雇用的価値観が強いです。
学校も入学したところで卒業することが一般的です。
そこに「合格させたら、卒業まで責任を持つと言う学校の発想」があるのですね。
それも合否の基準になっているという学びでした。