◆時間は進むが原稿は進まず
進まない原稿は、認知症に関するもの。
認知症と高齢者医療・介護とは重なる部分が多いのですが、これを「認知症のトピックとして取り出す」ってのが結構難しいです。
もう一つは、私自身も家族の介護・認知症でしんどい思いをしました。その記憶が蘇ってなかなか思考がまとまらないこと。
さらに、原稿のオーダーが、「厳しい現実をつきつける方向性」なのです。解決思考や、希望を感じる明るい話題はダメなんですね。
◆認知症の難しさ
認知症について勉強し直して、その難しさを感じます。
まず、認知症に治療法として確立されているものはまだないのです。現在行われている治療法・治療薬は、その進行を遅らせることや一時的な改善をみることは可能ですが、根本的な解決には至りません。原因はわかってきているのですけどね。
また、認知症の研究を進めることが難しいです。
認知症の本人から症状や、薬の効き目などを聞き出すことが難しいです。臨床実験とか、効果の測定をするのが難しいのですね。
さらに、認知症を抱える家族の人生が変わることもあります。誰も悪くないのですが、誰かが犠牲になるってことですね。
◆裁判にもなる
認知症の男性が間違って線路に入り、電車にひかれて亡くなりました。鉄道会社は、電車が止まったことによる損害賠償請求の民事訴訟を起こしました。地裁では、鉄道会社が勝訴しています。認知症の方が徘徊して自宅に戻れなくなる、何らかのトラブルに巻き込まれることは予見できた、防げたということです。
ただし、この裁判は最高裁まで進み、最終的に鉄道会社は敗訴しました。この話題は、認知症の方を地域で支えていこう、みんなで見守っていこうという世の中の流れに沿ったものとも言えます。しかし、判決を詳しく見ると、同居していた奥様も認知症であったり、介護を手伝っていた長男は別居だったりします。つまり、奥様が認知症ではなく、長男が同居であれば、この判決はどうなったかわかりません。
世間には、二世代同居をしながら家族の介護をしている人も多いです。何かあった時、認知症患者本人の責任は問われませんが、その家族・施設職員・介護する人の監督責任は追及されるのですね。
◆介護にもお金がかかる
家族で介護すれば費用は安くなります。しかし、肉体的・精神的負担は大きいですし、仕事を続けることが難しいです。ちなみに、全退職者数のうち約2%が介護を理由とするものです。この数値は過去20年間ほぼ変わりません。
もちろん状況などによりますが、「家族で介護する=仕事を辞める」ことで収入が減るのは危険と感じます。特に、正社員共働きで、どちらかが退職すると収入が半分になります。これは危険。まず現在の収入を維持することが重要と感じます。
あとは職場の配慮ですね…。「お前だけじゃないんだ」「○○さんも同じ状況で頑張っているぞ」と言われると、結構心折れやすいです。ちなみに、私は折れました。
家族が認知症…と感じたら、暮らしている自治体のHPをご覧ください。
かかりつけ医に連絡してください。
そこに、どうすればよいかの案内・窓口があります。
家族の状況、仕事・収入などにあわせて「できること」を進めることは可能です。
子どもの責任とか、長男・長女の義務を過剰に背負い込み、一人で悩まないでください。窓口に相談してください。すぐに相談すること、初期段階で支援を始めることが重要です。