昭和から平成の頃、転職は「35歳まで」という不文律のようなものがありました。
会社を変わる、仕事を変える、夢を追うのは、35歳まで。
35歳になったら、正社員になる。
35歳を過ぎたら、今の会社に骨を埋めるというのが決まりごとでした。
◆転職上限は45歳以上にあがっています(個人の感想)
根拠は、私の周辺に限られるのですが、むしろ40代以上の方が多いです。
35歳までの転職は、「職安×転職サイトの求人」などを見て、「応募~受験~合格~転職」というスタイルが多いです。「自分の意志」で運命を動かしていくパターンですね。
40歳以上の転職は、「ある日電話がかかってくる、メールが届く」「取引先、仕事で関係の深い人、同業他社から声が掛かる」というパターンが多いです。現実問題として、職安にある50歳以上の求人は、肉体労働がほとんどです。年を取るほど肉体労働しか残らないというのが現実なんですね。
◆転職した人に聞いてみると…
某県で、30代後半から40代前半の公立学校の先生が退職することが問題になりました。将来の幹部候補(ゆくゆくは校長になるという評価を得ていた先生)が、続々と抜けるのです。
何が起こったか…と調べると、私立学校への転職、教育大学の准教授への就任でした。大学関係は「公募」が多いです。受験して合格ですね。私立学校は、スカウトが多かったです。受験指導の力のある先生、アクティブラーニングなど生徒を主体とした授業を実践していた先生が、私立に転職するのです。
役所でも「スーパー公務員」系の同僚がNPO法人に転職する、大学の研究室に招かれることが増えていました。いわゆる人材流出ですね。で、転職後にお会いして感想を伺うと、「教員時代・公務員時代よりも忙しい。しかし、自由が増えた」「世の中を良くすることに直接かかわっている実感がある」「収入は減ったが、仕事の満足度は高まった」という声がほとんどでした。
私と同世代の友人も、国立大学の教授から、某私大の教授に転職しました。
共通テストの監督をしなくてよい、受験生を集めるための高校巡りをしなくてもよい、学校運営のための会議・雑務がない。「専門の研究に集中できる環境・予算・秘書」がある上に、求められているのも「専門性を高めること」だからね、と笑っていました。
◆スキル型・即戦力型の人材が求められている
かつての転職は、「経験」「体育会系リーダーシップ」「実績」が評価対象でした。
また、「ルーティン・ワーク」の転職は、35歳までかもしれません。
今は、「プロジェクト・ワークの経験」「ファシリテーション能力」「学問・理論的な裏付けを伴った実践」が、評価されやすいです。
ちなみに、私は公務員時代、俗に言う出世のレールから外れた場所で「プロジェクト業務」を担当していました。役所では「日陰の部署」「何をしているかよくわからない仕事」「上司によって評価が乱高下する人」でした(笑)。身から出た錆でしかありませんが、50歳を過ぎて転職できたのは、プロジェクト業務の経験ですね。
窓際の転勤族であったことに感謝しています(笑)。
◆日本の未来を考えた時
日本だけでなく、経済的に発展した国では、「責任を取ること、ストレスに耐えること」に給与が支払われます。
無医村や離島に赴任する医師の報酬が、都内の病院に勤務する医師の報酬より高いのは、担当する患者の命を一人で守ることに対する報酬なんですね。管理職も同様です。会ったこともない部下の不祥事で辞任するリスクも込みの報酬です。
10~20名程度のNPO法人に参加し(あるいは自ら法人を設立する)、社会課題の解決に取り組む若者が増えています。ここに、スーパー公務員・スーパー社員・優秀な先生が転職していくこともあります。収入は下がりますが、やりがいと家族の時間とは確実にあります。
やりがいと家族とを大切にする価値観にシフトしてくる人が、確実に増えています。
これが、日本の未来の希望と感じる今日この頃です。