小さい頃「伝記」をよく読んだものです。
その中でも「野口英世」は、スターでした。
1歳の時「囲炉裏」に落ちて左手を火傷し、貧しい中で学業に励み、会津若松の医師「渡部鼎」に左手の手術を受けて医師を志す。その後、渡米してロックフェラー財団の支援を受けて研究を続け…というストーリーは、今はどれくらい知られているのでしょうかね…。
◆少し前まで、医学の中心は「感染症」だった
「北里柴三郎」「志賀潔」「野口英世」は、すべて「感染症」の研究者。
病原体の発見、ワクチンの開発をしています。
海外では「コッホ」「パスツール」が、有名ですね。
この頃が「医学の黄金時代」だったのかもしれません。
「科学の進歩×富豪の支援」という最強の環境がありました。
◆ワクチン開発以前、感染症対策は「隔離」しかなかった
中世ヨーロッパの城郭都市では、国王が門を閉めて街を守ったようです。
「進撃の巨人」みたいな感じですね。巨人を「感染症・病原菌のメタファー」とするとイメージしやすいかもしれません。
となると、「隔離」には「封建社会・封建制度」が効果的です。
王の権威・権力が強いほど有効ですね。
新型コロナウィルスを封じ込めつつある国は、封建的・社会主義的なシステムがある、もしくは首相などのトップが「強いリーダーシップ×科学的な対処」を実行しています。古い封建的な価値観と最新の科学への理解が「有効」だったということですね。
◆北里柴三郎は、福沢諭吉の支援を受けて「伝染病研究所」を立ち上げる
話を戻します。
留学から帰国した北里柴三郎が、福沢諭吉の支援を受けた背景には「東京帝国大学医学部」との対立があったようですね。
この東京帝国大学医学部「青山胤通教授」との対立は、香港でのペスト研究で一つの決着を見ます。北里がペスト菌を発見する一方で、青山はペストに罹患してしまうのです。
この時、青山を庇ったのが陸軍軍医だった「森林太郎」、つまり「森鴎外」です。
当時は、帝国大学医学部閥である「青山×森」が主流派。
北里は「非主流派」だったようですね。
もちろん、研究実績や科学的な正しさは「北里」で間違いありません。しかし、政治的・官僚的な動きは「青山」の方が上。そして「伝研騒動」が起きるわけです。
(北里の創った「伝染病研究所」を、「東京帝国大学医学部の組織」として取り込み、青山が所長に就任した。「東大×青山」による「北里×伝研」の乗っ取りである。しかし、北里を慕う多くの職員は辞表を提出して伝研を去った。そして、北里は私費で「北里研究所(現在の「北里大学」)を立ち上げた。
◆感染症対策がうまくいく要素
歴史をひもとくと以下のことがわかってきます。
・隔離 → 「封建的な社会制度」×「トップの強力なリーダーシップ」
・ワクチン開発 → 「研究の環境の整備」×「金銭支援」
今の日本はどうですかね(笑)
科学的な正しさよりも、政治的な動きや広報戦略の方が優先されると「伝研騒動」のように、最も解決に必要な人が、続々と辞表を出してしまうでしょう。
また、どうしようもない個人の事情で、ワクチン接種やマスク着用が出来ない人もいます。だからこそ、集団免疫を高めるために、ワクチン接種をやや強めに進めることも必要だと思います。しかし、「受けたくない」という感情が「人権」として優先されれば、集団免疫の効果は低下します。だからこそ、接種は「申込制」ではなく、「行政から連絡が来る」方が良いのです。
ただ、公務員を減らし、医師を減らしてきた日本に、その余力はないかもしれません。
中世ヨーロッパに「ハーメルンの笛吹き男」という伝承があります。
この伝承の背景には「感染症」があります。
肺結核患者を収容した「サナトリウム」を舞台とした文学も多いです。
「魔の山」(トーマス・マン)が代表的ですね。
日本文学には、堀辰雄などの作品があります。
帯広の豚丼で免疫をつけましょう(笑)