テーマ「新型コロナの日々に」
現役時代、教育・福祉・医療の担当が長かったです。
現場では「それぞれの分野の専門家」が業務を遂行しています。
私の役割は「現場の専門家」と「行政」との通訳(笑)。
板挟みにあうことが多かった分、経験と学びは深まりました。
◆目次
世間と専門家との認識のズレ
◆世間の認識
世間は「世の中には正解がある」と思っています。
どんな困難でも「解決策」「解決できる人」があるとどこかで信じています。
「メシア待望」みたいなものですね。
自分や家族では解決できない問題を「この人なら解決してくれるはず」と信じ、期待するのです。
◆専門家の認識
学問を突き詰めていくと「世の中には正解はない」「正解は個々に異なる」ことがわかってきます。
魔法がないことも、逆に様々な条件が重なって「魔法」が生じることも体験的にわかっています。
「解決」には「情報」「協力」「試行錯誤」が必要で、時間もかかります。
教科書の知識は大切ですが、教科書通りで解決することはあまりありません。
「正解はない」という認識はまだ一般的ではない
◆専門職が受けるクレーム
例えば「人口減少時代における地域課題」の「解決方法」「正解」はありません。
先端事例でも10年前から実践して、まだ試行錯誤の真っ最中です。
これを「赴任して1~2年で解決すること」を期待されます。
「まだ?」「本当に専門家」「全然進んでないよ」「何も変わってないよ」で会議は終わります。
◆問題解決に協力して取り組むことが必要ですが
例えば「医師・先生」への「敵視・攻撃・不信」は良くあります。
これは「クライアントが期待していた解決・正解」が導かれない時に生じます。
できれば「問題についての情報を共有しつつ、一番良い解決方法を創っていく」、つまり「急がば回れ」というスタンスで「正解を一緒に創っていくこと」が理想なのですが…。
新型コロナが浮き彫りにするもの
◆正解を求める組織は機能不全に陥る
新型コロナ対応に正解はありません。
正確には「感染終息に対する医学的な正解」はあります。
しかし、医学的な正解から感染終息を導くには「医師の努力」だけでは不可能です。
また「医学的な正解」だけで解決するほど現代社会は単純ではありません。
正解を求める組織は、この段階で思考停止になりやすいです。
◆感染終息後にやってくる最悪のシナリオ
「正解がない事象」への対応は難しいです。
対応策の多くは「半分は救えても、半分は救えない」が現実。
救えなかった半分には、別な対応策を考えて…の無限ループ。
対応が無限に続く現場では、バーンアウトする人が出やすいです。
また、「救えなかった半分」の責任を背負わされて異動、退職を求められる人もいるでしょう。
つまり「正解を求める人」によって「正解がないことを理解している人」「正解のない現場で解決策を見出した人」が裁かれ、現場から去ることになります。
最後に
正解はない…という表現は誤解を招くかもしれません。
「正解は一つではない」「前提によって正解は異なる」とでも言えば良いでしょうか。
そこで求められるのは「共通解」「最適解」「納得解」。
実現のためには、コミュニケーションと、「科学の言葉」を通訳できるコーディネータが必要だと思う今日この頃です。